大阪家庭裁判所 昭和55年(家)1519号 審判 1980年6月13日
申立人 川上美江子外一名
右法定代理人親権者母 川上光子
主文
申立人らが母の氏である「川上」を称することを許可する。
理由
1 申立人らは主文同旨の審判を求めるものであるところ、本件記録によれば、申立人らの母である上記光子は、昭和五○年一一月一一日夫である川上和彦と協議離婚の届出をなし、上記戸籍に復籍したものであるが、現在同人との間の長女および長男である申立人らの親権者であり、かつ申立人らを肩書住所で監護養育しているので、申立人らを自己の上記戸籍に入籍させるため、本件申立におよんだものであることが認められる。
2 そうすると、本件申立は理由があるからこれを認容し、申立人らが母の氏を称することを許可する。
3 なお、申立人美江子は現在一六歳であるが、本件記録によれば、同申立人は、ダウン症状群と呼ばれる特殊精神薄弱児であり、言葉、文字、記号などによる他との意思の疎通ができず、抽象的な事柄の理解も不可能であつて、身分行為能力をまつたく欠いていることが認められるから、このような場合には、その法定代理人である上記幸子が、同申立人に代わつて子の氏の変更手続をなすことができるものというべきである。民法七九一条二項は、単に一五歳に達すれば子は単独で子の氏の変更手続をなし得るということを定めたにとどまり、一五歳以上で意思能力のない未成年者の子の氏の変更手続を法定代理人が代わつてなすことまで禁じたものではないと解される。したがつて、同申立人の本件申立は適法である。
(家事審判官 山崎杲)